ワンルームマンション規制条例は、あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、日本人の傾向や将来的な想定が要因となり、規制が設けられています。
人と企業の東京一極集中や単身者・外国人労働者の増加で、ワンルーム物件の需要はどんどん高まっており、今後は規制の内容が変わってしまうかもしれません。
そこで今回は、各自治体におけるワンルームマンション規制の例と具体的な理由、ワンルームマンションの今後について、わかりやすく紹介します。
東京23区の各区で、ワンルーム規制条例が制定されており、2000年代には規制が強化されました。
東京都だけではなく、日本政府や国としての問題ともなりえるワンルーム規制条例は、どのような規制なのでしょうか?
<東京都の「ワンルームマンション規制条例」とは?>
ワンルームマンション規制条例とは、各自治体で制定された、単身者向け住宅であるワンルームマンションの建築を抑制するための規制です。
この規制が制定された大きな要因としては、ワンルームマンションに住む一人暮らし世帯の増加を避けたい狙いが考えられます。
ワンルーム規制では、一棟すべてを単身者向けのマンションにすることはできず、決められた戸数はファミリー向けの部屋にしなければいけないルールもあるのです。
各自治体により差はありますが、規制のおもな内容として、1Kを含むワンルームの1戸あたりの最低住戸専用面積を定めるもので、現在では23区のほとんどが25平方メートルとなっています。
規制ができたことにより、新規のワンルームマンション建設が難しくなり、規制に引っかからない広い土地が必要となり、新規物件が増えていません。
<23区それぞれで規制対象が異なる>
ワンルームマンションの規制は規制の総称であり、各自治体により条例の名称がつけられています。
・港区…単身者向け共同住宅等の建築及び管理に関する条例
・渋谷区…渋谷区ワンルームマンション建築物の建築に関する指導要綱
・練馬区…練馬区まちづくり条例
上記のように各自治体で名称のほか、条件や規制対象も少しずつ異なり、以下のような規制内容があります。
【港区】
・最低住戸専用面積:25平方メートル
・総戸数7戸以上の建築物が対象
【渋谷区】
・最低住戸専用面積:28平方メートル以上、33平方メートル未満
・総戸数15以上の建築物が対象
【練馬区】
・最低住戸専用面積:25平方メートル以上、30平方メートル未満
・総戸数20戸以上の建築物が対象
また、豊島区では狭小住戸集合住宅税条例、いわゆる「ワンルームマンション税」が2004年6月に制定され、ワンルームマンションの建設が課税の対象です。
豊島区は全世帯のうち50パーセント以上が単身世帯であり、専有面積が30平方メートルを満たない集合住宅が多いことから、ファミリー世帯が安心して暮らすための条例を制定しています。
<規制はいつから?>
ワンルームマンションの規制そのものは1980年代から存在していますが、2008年頃より規制の内容が強化されました。
2007年の税源移譲により、自治体の財源が住民税・法人税・消費税となったことが影響を受けています。
自治体としては、住民税の徴収者難しい単身者と納税額の少ない若者よりも、収入が多く、長く定住するファミリー世帯を誘致するほうが、より多くの財源を確保できるのです。
東京都23区でワンルームマンションが規制される理由として、どの自治体においても居住者と財源による問題があります。
ここからは、ワンルームマンションが規制されるおもな3つの理由を見ていきましょう。
<近隣住民・居住者とのトラブル防止のため>
とても残念なことに、一部の単身者がマンションや地域のルールを守れておらず、近隣住民や同じマンションの居住者とのトラブルが起こっているのが現状です。
特に問題になっているのは、ゴミ出しのルールが守られていない、マンション付近でのゴミ・騒音トラブル、自転車が決められた場所に駐輪されていないなどのルール違反があります。
この状態を改善し、ファミリー世帯が安心して生活できることにつながるのが、規制が制定された理由のひとつです。
<住民票を移さない人が多く、住民税が徴収できないから>
単身者のなかには、転居しても住民票を移さないことが原因で、自治体の住民税が徴収できない問題が発生しています。
自治体にとって住民税は大きな財源ですが、収入の少ない学生・若年層や、住民票を移さない人が増加してしまうと、財源が確保できません。
税収の面から考えた場合でも、ファミリー世帯が多いほうが多くの財源を確保できるメリットがあります。
<単身者は地域活動への参加が少ない傾向にあるから>
ワンルームマンションの対象者である学生や新社会人、サラリーマンといった若年層は、地域活動や行事への参加率が低い傾向にあります。
この状態のままでは、徐々にその地域の自治会に参加できる人数が減り、地域活動が維持できなくなってしまうでしょう。
また、地域への関わりがないとトラブルを起こしてしまいやすい、治安悪化につながるマイナスイメージがあることも考えられます。
あと数年で、規制緩和や規制強化はなかなか考えられず、新築ワンルームマンションの増減ははっきりしていません。
今後のワンルームマンション規制の流れと、需要などについて解説します。
<しばらく規制が続くことが考えられる>
以前より都心には若年層・単身者を中心に多くの人口が集まり、東京一極集中状態が続いていることから、23区内のワンルームマンションへ入居する方が多く、もうしばらくは規制が緩和されることはなさそうです。
今後さらに一極集中が進み、さらに単身者が23区内へ流入するようであれば、また別の規制などが制定される可能性もあるでしょう。
現時点では、このワンルームマンション規制がしばらく続くことが想定され、新規物件の増加は不透明な部分があります。
<都心のワンルーム物件の需要は増えている>
東京一極集中状態にくわえ、少子高齢化、生涯未婚率の上昇により、ワンルームマンションの需要は増えていると考えられます。
年々生涯未婚率は男女ともに上昇しており、就職した東京で、これからの人生を単身で過ごしていく方も多くなるでしょう。
一生を一人で過ごす予定であれば、ファミリー向け物件では部屋を持て余すようになり、家賃も相応ではなくなるので、やはりワンルームに住む方が多いのです。
そのような単身者・高齢者がワンルームマンションへ住み続ける、さらに若い世代が流入してくるため、ファミリー向け物件より比較的安価なワンルームマンションの需要が増えていくことが想定できます。
<政府が本社の移転を推奨している>
特に人口が密集している東京23区内では、単身者・ファミリー世帯・企業の多くが集中しており、過密状態にあるのが現状です。
このことから日本政府は、都内にある企業の本社移転を推奨しており、東京都以外の地方へ移転させる、地方創生の政策として進めています。
東京23区から地方へ本社機能を移すなどした企業の税金を優遇する「地方拠点強化税制」があり、この政策がさらに推進されれば東京都内におけるワンルームマンション規制に変化があるかもしれません。
2008年頃にはじまったワンルームマンション規制強化をきっかけに、新築のワンルーム・1Kの物件は減少傾向にあります。
その一方で、一極集中と生涯未婚率の上昇にともない、さらにワンルームマンションの需要が増えているので、単身者向け中古マンションの価格は上昇傾向にあります。
今後、日本政府による地方創生や時代の流れにより、何かしらの変化があるかもしれません。
ワンルームマンションの規制の行く先はまだわかりませんが、しばらくは規制の流れが続いていくでしょう。