昨今、和室のある家は減少傾向にあり、代わりにフローリングで仕上げた洋室だけで構成される家が非常に増えています。
ところでこのフローリング材、さまざまな種類があるのをご存知でしょうか。
この記事では、特に「無垢材」と「複合フローリング」の2種類に注目し、選び方を考えていきます。
無垢材のフローリングとは、「天然木100%の板で他の種類の木材が混ざっていない床材」のことを指します。
無垢のフローリングに使用されている木材には、ヒノキや杉・ウォルナットなどさまざまな種類があります。
無垢のフローリングの特徴としては、天然木独特の香りがし、手触りも良い素材が多いです。
また、天然素材のため年々その表情を変え、長い年月に渡り風合いを楽しむことができるのが魅力です。
こうした素材の持つ魅力の他にも、無垢材にはさまざまなメリットがあります。
・質感や肌触りが良く、天然由来の独特の香りがする
無垢材が選ばれる最大の要因です。
無垢でしか表すことのできない高級感が生まれます。
・傷ができてもその部分だけを削って補修することができる
3~4回程度なら張り替える必要がなく、部分的な補修をすることが可能です。
・経年劣化をすることで味わい深い仕上がりになる
年数が経過することで劣化こそするものの、その劣化自体が結果的に良い方向に働きます。
これも無垢材が選ばれる大きな要因のひとつです。
・柔らかく足腰に優しい
意外に知られていないのが、無垢材は柔らかいということ。
柔らかい、と言ってもクッションフロアのような柔らかさではありませんが、足腰への負担は通常のフローリングと比べてかなり軽減できます。
・天然素材ゆえ色のバラつきがあり、空間の統一性を図るのが難しい
人工物ではないため、どうしても色や木目・節目のばらつきがあります。
・素材の種類によっては柔らかく傷つきやすいことがある
メリットで挙げた「柔らかい」ということは、そのままデメリットにもなり得ます。
・素材の種類によっては割れや捻じれ、反りが起こりやすい
そのため、定期的な補修・メンテナンスが必要となり、床暖房にも使用できないことがほとんどです。
割れや捻じれ・反りなどのデメリットは、なぜ起こるのでしょうか。
その答えは「木材の性質」にあります。
木材は、床材として加工されてからも水を含んでおり、秋~冬場の乾燥する時期にかけて縮んでしまいます。
逆に、春~夏にかけては収縮した木材が元にもどる、あるいはそれ以上に伸びることがあります。
こうした木材の性質から、隙間ができたり逆に収まりきらず反りが起きたりするのです。
このデメリットは、断熱性の高い住宅にするなど寒暖差に気を付けた家造りをすることで、ある程度解消することができます。
一般的なフローリングと比べ、無垢材のフローリングはその製造過程から高くなる傾向にあります。
とは言えその価格は、木の種類や木目・節の有無などによって大きく変わります。
なかにはそこまで高価にならない素材もありますので、来客が少ない部屋には安価なもの・来客が多い部屋には高価なものなど、使用する場所によって使い分けると良いでしょう。
複合フローリングとは、「合板などのベースとなる材料の表面に化粧材を張り合わせた床材」を指します。
この複合フローリングは、無垢材のフローリングに比べ、一般的に使用されているフローリングです。
表面にオークやウォルナットなどのさまざまな種類の突板や挽き板が使用されていることが特徴で、膨張や伸縮が少なく温度や湿度に強い性質を持ちます。
複合フローリングのメリットに注目してみましょう。
・温度や湿度など環境に左右されないのが強み
そのため、無垢材に比べ割れや反りなどが起こることが少ないです。
・衝撃や摩耗に強い
人工的に制作されたもののため、強度などに配慮されています。
無垢材よりも傷がつきにくく、メンテナンスの必要がありません。
・床暖房に使用できるものが多い
温度や湿度などに左右されないため、床暖房にも対応することが可能です。
※すべての複合フローリングが対応できるわけではないので注意。
・戸建用に留まらず、アパートやマンションなどさまざまな用途に使用できる
いわゆる加工品のため、用途に合わせて使用することが可能です。
・デザインが豊富で空間の統一を図ることができる
無垢材は天然素材のため、デザインの統一を図ることが難しいことがデメリットでしたが、複合フローリングは色や節目の大きさ・間隔など統一することが可能です。
・無垢材に比べ安価
使用する厚みや仕上げの種類などにより価格は変動しますが、無垢材に比べると安価になります。
・耐衝撃性はあるが、傷がつくと無垢材のように補修はできない
傷や凹みが気になる場合には、床材を張り替えるしかありません。
・踏み心地は無垢材に比べ硬い印象、足腰に優しくない
無垢材と比べると足腰に負担がかかるため、高齢世帯などがいる場合には向きません。
無垢・複合どちらのフローリングにもそれぞれの良さがあり、なかなか決めかねる方も少なくありません。
ここからは、マイホームにおいて用途や目的別にどちらのフローリングを使用したらよいのか、選び方をご説明します。
先述のとおり、無垢のフローリングに比べ複合フローリングは安価になります。
選び方のコツとしては、新築住宅を建築する際に床材よりも意識したいポイント(たとえば水回りなどの住宅設備)がある場合は、複合フローリングを選んでコストを抑えると良いでしょう。
また、子どもが小さいうちは物を投げたり落としたりすることが多々あります。
耐衝撃性に優れた複合フローリングであれば傷や凹みがつきにくく、メンテナンス費用を抑えることができます。
ただし、耐衝撃性に優れていると言っても限度があるため、傷がついた場合には張り替える必要があることは覚えておいてください。
上記のような特別な事情がない場合には、無垢材のフローリングを利用したほうが最終的に安くなる可能性があります。
理由としては、定期的な補修をすることで長く持たせることができるからです。
また、無垢材のフローリングにはお金で表すことのできない「味わい深さ」という付加価値がある点も忘れてはいけません。
どこに費用を重点的に充てるのか、一度考えてみると良いかもしれませんね。
無垢材のフローリングは、先述のとおり味わい深い独特の空気感を演出してくれます。
用途としては、玄関やリビング・客間などに良く使われます。
古くから日本人にはおもてなしの心が備わっており、来客には良い気分を味わってもらいたい、という気持ちの表れなのかもしれませんね。
来客のないその他の居室や寝室などは、複合フローリングで仕上げるなど、差別化をすることで費用の軽減を図ることができます。
逆の発想として、寝室くらいは無垢材を利用して心地よい部屋にしたい、という方もいます。
・無垢のフローリングは、地表を下回るエリア(地下室など)には使用できない
地下室は陽が当たらず、温度や湿度の影響を非常に受けやすい部屋です。
そのため、無垢材の性質上不適合と言えるでしょう。
・シックハウス対策には無垢のフローリングがおすすめ
複合フローリングや3層フローリング・木質系フロアは、接着剤を利用して仕上げられています。
健康上の配慮から、無垢のフローリングを選ぶ方も多く居ます。
この記事では2種類のフローリングを比較してきましたが、どちらが極端に優れているということはありません。
用途や費用面をしっかり検討し、あなたのマイホームに適切なフローリング材を選びましょう。